
#ラブタイツ キャンペーンの炎上
先日、ストッキングやタイツを製造販売しているメーカーATSUGIのキャンペーンが炎上しました。問題となったのはタイツの日にTwitter上で展開したラブタイツキャンペーンです。
ATSUGIから複数のイラストレーターに依頼し描いてもらった『タイツを履いている女性たち』のイラストを公式アカウント上で「#ラブタイツ」のハッシュタグをつけ投稿するというものでした。
今はすでに、投稿された一部のイラストに性的な描写を連想させるような不適切な表現があったとして謝罪文が公表され、該当のイラストも削除されています。
確かにイラストは少し性的ではありましたが(下からのアングルだったり、スカートをたくし上げていたり、下着が見えそうだったり)上手だなと思うようなものばかりで、その絵自体に問題があるというわけではありませんでした。だとしたら何が問題だったのでしょうか。
ATSUGIがやってしまったことは商品を顧客に売るためのPRではなく、顧客自体を(主に)男性たちへ向け商品化し、差し出し、女性が性的に見られることを助長するということでした。
今回イラスト自体素敵なものが多かったので「騒ぎすぎ」「フェミニストが気に食わないものを叩いて表現の自由を侵害しようとしている」という意見が多く出ましたが、それらの意見は今回の問題の本質からはズレています。
実際にキャンペーン投稿のリプライ欄には「かわいい」「エロい」などイラストに対してであっても、タイツを履いている女性を性的に評価するような言葉が並んでいました。
声を上げた女性たちが伝えたかったことは「私達は性的な目で見られるためにタイツを履いているわけではない。」ということです。
メーカーが公式に「タイツを履いた女性を性的な目で見ていいですよ」と太鼓判を押したことに対して実際に商品を使っている顧客が不快感を示したというだけのことなのです。
自分のために使っていたものを、他人が勝手に評価するというのは気持ちのいいものではありません。
これまでも毎年タイツの日にはこういったイラストが出ていたそうです。絵を発表することを楽しんでる人がいて、それを見た人が「かわいい」と感想を言う文化がある。
今回のキャンペーンではタイツを作っているメーカーが、その二次元の創作文化と、(人から評価されるためでなく)日用品として実際にタイツを履いている人とを結びつけてしまった。
あたしが学生のころ(今は読んでいないのでわかりませんが)、女性向け雑誌にはよく「愛され女子」などという文言や特集がありました。
もともと「男性に選ばれるために女性はおしゃれをするもの」という文化がずっと根深くあります。そして、最近はそれを抑圧的に感じる女性が昔よりもたくさん出てきたように思います(自分自身も含め)。
その抑圧から解放されたい人にとって、今回のキャンペーンは許せないものであったはずです。
今もし『女性の見た目を他人が勝手に評価しない社会』が完全に出来上がっていたなら、今回のようなキャンペーンがあっても炎上しなかったでしょう(その場合イラストの内容自体も変わっていたかもしれませんが)。
性別に関わらず、他人を見た目で評価しない。
そして今特にその目線を受けている女性たちが呪縛から解放され、いかなる格好も自分自身のためにできる日がはやく来ますように。
このキャンペーンについてATSUGIは謝罪文を発表しましたが、内容は「不快にさせ申し訳ありませんでした」というもので、問題の本質が伝わっていないように思えました。
ATSUGI
【ラブタイツキャンペーンに関するお詫びとご報告】
https://www.atsugi.co.jp/news/pdf/201103.pdf
偉そうですが、今回の問題から自分たちの顧客が何を求めているのかもう一度考えてみる必要があるでしょう。
あたし自身も人の見た目を勝手に評価しないよう、気を付けて生きていかねばと襟を正すきっかけとなりました。